夏の暑さが厳しくなると、「熱中症が心配だから薬で体温を下げようかな」「汗を止めた方がサラサラして快適かも」と思う方も多いかもしれません。でも実は、その選択は危険な落とし穴になりかねません。

解熱薬について

熱中症で体温が上がるときに使われがちな解熱薬ですが、実際には熱中症の治療には効果がないことが知られています。熱中症は「体が熱を外に逃がせなくなった状態」であり、感染症による発熱とはメカニズムが違います。そのため、薬で無理に体温を下げても意味がないのです。実際、アメリカ海兵隊の訓練中に起きた熱中症を報告した論文でも「解熱薬は効果がなく、冷却が唯一の治療」と明言されています (Rohe, 2012)

制汗スプレーについて

汗は体温調節のために欠かせない機能です。汗が蒸発することで体の熱を逃がし、オーバーヒートを防いでいます。制汗剤は汗腺を塞いでしまうため、体温調節がうまくできなくなるので注意が必要です。

つまり、熱中症の予防・対策で大切なのは「薬やスプレーでごまかさない」こと。こまめな水分補給、日陰での休憩、通気性の良い服装といった基本を守るのが一番効果的です。


院長コメント👨‍⚕️

歴史上の有名なテニスプレーヤー、ビョルン・ボルグは試合中に「汗だく」になる姿で知られていました。彼はクールに見えるプレーの裏で、実は汗をかくことで体温をコントロールし、最後まで集中力を保っていたのです。汗を止めるというのは、まるで試合中にラケットを置いてしまうようなもの。解熱薬や制汗剤で無理に体の働きを止めるのは逆効果です。むしろ、汗は「体が出してくれる天然のクーラー」なのですから、大切にしてあげましょう。

「薬やスプレーで熱中症対策!」という発想は、ちょっとした近道に見えて実は迷子になる道。歴史でもスポーツでも、王道を歩んだ人こそ勝ち残っています。今年の夏も、基本の“水分・休憩・涼しい環境”で王道の熱中症対策をしていきましょう!

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