【小児科医の眼】インフルエンザワクチン「フルミスト」と「注射型」—子どもにはどちらが適しているのか?
皆様、こんにちは。
秋の気配が深まり、今年もインフルエンザ予防接種の季節がやってまいりました。保護者の皆様から、近年ますます多く寄せられるご質問がこちらです。
『 鼻からのワクチン“フルミスト”と、従来の注射型ワクチン、子どもにはどちらを選ぶべきでしょうか?』
この疑問への答えはなかなか難しいです。現時点(2025年10月)で感じていることと調べたことをご提供いたします。

🧪 学術的見地からの比較
まず、ワクチンの「効果」について見てみましょう。
- フルミストと注射型の効果は基本的に同等
イタリアで行われた2022〜2024年の大規模研究では、2〜17歳の小児において、鼻噴霧型(LAIV4:フルミスト)と不活化ワクチン(IIV)は、いずれも予防効果を示し、大きな差は認められませんでした (Rigamonti et al., 2024)。 - 注射の痛みを回避できるのはフルミストの強み
フルミストは鼻からスプレーするタイプで、針を使わないことから、特に乳幼児や注射が苦手なお子さまにとっては受け入れやすい選択肢です (Mossad, 2003)。 - 接種は1回で完結する点も利点
2歳以上の健康な小児では、1回のフルミスト接種で完了するため、通院回数が少なく済むのも利便性の高いポイントです (Jhaveri et al., 2023)。
一方で、注意点もございます。
- 免疫力の弱い方が同居している家庭では慎重に
フルミストは「生ワクチン」のため、1週間程度は感冒症状がでたり、稀に家庭内で感染を起こしてしまう可能性がございます。ご家庭に妊婦、高齢者、免疫抑制状態の方がいらっしゃる場合は、注射型の不活化ワクチンが望ましいとされています (Gill & Schlaudecker, 2018)。
✅まとめ:どちらを選んでも、基本的な予防効果は得られます
- 「注射が苦手」「回数を減らしたい」お子さまにはフルミスト
- 「ご家庭に免疫の弱い方がいる」「接種後の風邪症状は勘弁」「確実性を求めたい」方には注射型
というように、それぞれのご家庭の事情やお子さまの性格に合わせた選択が可能です。
フルミストは2025年はまだ流通量が限られています。
フルミストは流通量が限られており、現時点で当院含めて他医療機関でも予約が取りづらい状況が続いております。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。一方で注射タイプは在庫は潤沢にございますのでご安心ください。
🩺 院長コメント👨⚕️
選択の鍵は“自分に合った戦術”を選ぶこと
江戸時代の剣術家「柳生宗矩(やぎゅう・むねのり)」はこう説きました。
「活人(かつじん)の剣こそが真の道なり」
つまり、剣術は相手を倒すためでなく、命を生かすための術であるべきだというのです。
ワクチンもまた、「どれが強いか」ではなく、「どれが今のあなたの子に最も合っているか」を見極めることが大切です。
注射か、鼻スプレーか――それは優劣ではなく、“適材適所”の問題とも考えられます。子どもにとって、そしてご家族にとって、最も“活きる選択”をしていただければと思います。
今年の冬も、共に元気に乗り越えてまいりましょう。
📍当院ではフルミスト・注射型ともに対応しておりますが、フルミストは数量に限りがございます。ご希望の方はお早めにご予約ください。

