卵アレルギーがあっても、インフルエンザワクチンは接種できます。
~今、医学がたどり着いた「安心」~
こんにちは。
秋が深まり、インフルエンザワクチンの季節がやってきました。毎年この時期、よくいただくご質問があります。
「うちの子、卵アレルギーがあるんですが、インフルエンザワクチンは大丈夫でしょうか?」
結論から申し上げますと、現在のワクチンは、卵アレルギーがあっても基本的に安全に接種できます。

科学的に証明された「安全性」
世界中の研究が、卵アレルギーのあるお子さんへのインフルエンザワクチン接種が「安全」であることを示しています。
- 韓国の大規模研究では、卵アレルギーの子ども108人に接種を行い、重篤な副反応は確認されなかったと報告されています(Chang et al., 2013)。
- 日本の研究でも、重度の卵アレルギーがある17人の子どもにワクチンを接種し、全員が安全に接種できたことが確認されました(Shimizu et al., 2016)。
- カナダでは、皮膚テストや分割投与なしでの通常量接種が安全であることが示されており、「特別な対応は不要」との見解も出されています(Hui, 2014)。
なぜ安全なのか?
現在主流となっているワクチンは、製造の過程で卵由来のタンパク質(オボアルブミンなど)の含有量が極めて微量になっており、
アレルギー反応が起こるリスクは非常に低いとされています。
さらに、重度のアレルギー歴があるお子さんであっても、分割ではなく通常の接種方法で安全に受けられるという報告もあります(Greenhawt et al., 2012)。
それでも、なぜ問診票には「卵アレルギー」の欄があるの?
ここで、多くの保護者が疑問に思うのが、「なぜ日本では、いまだに予診票に卵アレルギーの有無を記載する欄があるのか?」という点です。
これは、いくつかの理由が考えられます。
- 過去の慣習が残っているため:かつて卵アレルギーはワクチン接種の「相対的禁忌」とされていた時代があり、その名残として問診票に記載され続けています。
- 慎重を期す文化的背景:日本では「万が一」のリスクを避ける傾向が強く、現場での安全確認を確実にするため、あえて項目を残していると考えられます。
- 厚労省の改訂が段階的であるため:ガイドラインや予診票の様式が全国で一律に最新化されるまでには、時間と調整が必要なのが実情です。
つまり、「危ないから聞いている」のではなく、「確認のために残してある」という理解が正確です。
院長コメント👨⚕️
常識が変わるのは、勇気のいること
19世紀、天才科学者ガリレオ・ガリレイは、地球が動いていると主張して裁判にかけられました。
当時は「地球は動かない」という考えが“常識”だったからです。
でも今、誰もが「地球は太陽の周りを回っている」と知っています。
医学の世界も同じです。
かつては「卵アレルギー=ワクチン危険」とされていたものが、今では「適切に接種すれば安全」となりました。
常識が変わるには、時間も説明も必要です。だから、問診票にもまだ「卵アレルギー」の欄があるのです。
でもどうか、ご安心ください。
私たちは、最新の医学的知見に基づいて、安全な接種を行っております。
もし不安があれば、いつでもお気軽にご相談ください。

