猛暑の外出、赤ちゃんと遠出する際の注意点とは?

夏本番。ご家族での外出や帰省、旅行の機会が増えるこの時期、赤ちゃんを連れての長距離移動や外出に不安を感じる保護者の方も多いかと思います。特に気になるのが「高温環境による赤ちゃんへの影響」です。

今回は、小児科医としての視点から、赤ちゃんとの夏の外出時に注意すべきポイントをご紹介いたします。


1. 生後6か月未満の乳児には水分補給は母乳・ミルクのみで十分

「暑いから赤ちゃんにも水やお茶を与えた方がよいのでは?」という質問をよくいただきます。しかし、近年の系統的レビューによれば、生後6か月未満の乳児にとって、たとえ猛暑であっても母乳または粉ミルクによる水分補給で十分であり、追加の水分は必要ないとされています。(Edney et al., 2022)


2. ベビーカーの過剰な遮光は逆効果になることも

直射日光を防ぐために、ベビーカーにタオルや布をかける保護者の方も多く見受けられますが、その行為がかえって「熱がこもる原因」になる可能性があります。

2023年の実験研究によれば、乾いた布でベビーカーを覆うと、内部温度が約3〜4℃上昇し、むしろ赤ちゃんにとって過酷な環境になるとの報告があります。一方、濡れたガーゼタオルと小型扇風機を併用することで温度が下がるという有効な対策も示されています(Bin Maideen et al., 2023)


3. カーシートの高温によるやけどに注意

車内温度の上昇は深刻です。とくに金属製の部品や黒い表面は短時間で高温になります。2012年に報告された症例では、11か月の乳児がカーシートの熱くなったプラスチック部品に触れて、接触熱傷を負ったとされています(Moharir et al., 2012)

外出前には座席や金具の温度を必ず確認し、布を敷く、日よけを使用するなどの配慮が必要です。


院長コメント👨‍⚕️

江戸時代の茶人・松尾芭蕉は、厳しい自然の中を旅しながらも、風景と気候に応じた繊細な「装備」と「心構え」で旅を楽しんだと伝えられています。赤ちゃんとの夏の外出も同じで、「自然をなめず、対策を怠らず」。これが、安全と快適の鍵です。しっかり準備して、楽しい夏の思い出をつくりましょう!

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