長引く下痢―見落とされがちな「乳糖不耐症」とは?
こんにちは。
本日は、お子さまの「長引く下痢」に潜む可能性がある“乳糖不耐症”について、最新の医学的知見を踏まえて解説いたします。

🧀 乳糖不耐症とは?症状と見分け方
乳糖は牛乳などに含まれる糖分で、消化には「ラクターゼ」という酵素が必要です。この酵素が不足していると、乳糖が分解されず、腸内で発酵し以下のような症状を引き起こします:
- 水様性の下痢が続く
- お腹の膨満感やガス
- 腹痛や音が鳴る(ゴロゴロ)
- 酸っぱい臭いの便や、おしりのかぶれ
特に感染性胃腸炎や抗生剤の使用後など、腸の粘膜が一時的に弱っている際に「二次性乳糖不耐症」として現れることがあります。
🍼 赤ちゃんの場合の対応
まだ母乳やミルクのみで栄養を摂っている乳児においては、乳糖が消化できない状態が続くと栄養吸収にも影響が出てしまいます。
このような場合、医師の診断のもとで一時的に乳糖不耐症用のミルク(乳糖除去ミルク、無乳糖ミルク)へ切り替えることを検討するのもひとつの方法です。
ただし、母乳は原則として継続が推奨されており、乳糖不耐症が疑われても無理に中止する必要はありません。母乳は乳糖を含みますが、感染予防・免疫維持の観点からも価値が非常に高いためです。
🩺 ご家庭でできる対応と受診の目安
以下のような対処法が推奨されます:
- 下痢が続く際には牛乳や乳製品を一時的に控える
- 発酵乳(ヨーグルト・チーズ)は比較的安全に摂取可能
- 乳児の場合は乳糖除去ミルクの検討を(医師の判断に基づいて)
- 食欲不振や体重減少がある場合は早めに小児科へ
🖋 院長コメント:見えない敵に気づける眼差しを
江戸中期の俳諧師・与謝蕪村は、「春の海 ひねもすのたり のたりかな」と詠み、静かな風景の中に潜む微細な変化を描きました。
一見変わらないように見えるお子さまの症状の中にも、注意深く見れば、確かな“サイン”があることを私たち医師は知っています。
長引く下痢の背景に、単なる感染症だけでなく乳糖不耐症があるかもしれません。見えにくいものに気づき、正しく対応すること――それこそが、小さな身体を守るための第一歩なのです。