インフルエンザ脳症と予防策

インフルエンザ脳症は、インフルエンザウイルスに感染した後に発症する深刻な脳の合併症で、特に子供に多く見られます。高熱、けいれん、意識障害などが急速に進行し、最悪の場合、命に関わることもあります。脳症に対する有効な予防策や治療法が重要視されている中、今回はいくつかの最新の研究を紹介しながら、インフルエンザ脳症のリスクや予防策について考えます。

研究結果の要点

  1. Howardら(2018年)の研究では、インフルエンザA(H1N1)に感染した2人の兄弟が急性壊死性脳症(ANE)を発症しました。どちらもワクチン接種を受けていなかったため重篤化し、1人は命を落としましたが、もう1人は回復しました。この研究は、特に脳症のリスクがある子供には、インフルエンザワクチン接種が極めて重要であることを強調しています。(Howard et al., 2018)
  2. Iizukaら(2020年)は、インフルエンザウイルス感染後に成人が急性壊死性脳症を発症した2例を報告しました。このケースでも、重篤な神経障害が残り、早期の抗ウイルス治療やステロイド治療が推奨されています。彼らは、早期発見と積極的な治療が回復のカギであるとしています。(Iizuka et al., 2020)
  3. Togashiら(2004年)の研究によると、日本の子供たちにおけるインフルエンザ関連の急性脳症の発生率は非常に高く、重篤なケースでは死亡率が37.1%に達しました。この研究は、インフルエンザウイルスが脳内で血管を障害し、重篤な神経症状を引き起こすことが明らかにされています。予防接種が推奨され、特に幼児には重要です。(Togashi et al., 2004)

予防策

インフルエンザ脳症の予防策として最も効果的なのは、毎年のインフルエンザワクチン接種です。ワクチンは、脳症を含むインフルエンザの重篤な合併症を予防するのに非常に有効であることが研究からも示されています。また、インフルエンザシーズン中に発熱や呼吸器症状が見られた場合、迅速に医療機関を受診し、抗ウイルス薬による早期治療を受けることが大切です。特に、過去にインフルエンザ脳症を経験したことのある患者や、神経系に合併症のある人々は、特に注意深いモニタリングが必要です。

院長コメント👨‍⚕️

インフルエンザ脳症に対する予防は、「しっかり準備していれば、嵐も怖くない」ということわざの通りです。準備とは、もちろんワクチンの接種です。たとえば、江戸時代の剣豪・宮本武蔵は、一度も刀を抜かずして勝つことを理想としたと言われています。戦う前に、相手を見極め、戦わずして勝つ。これと同じように、病気にかかる前にしっかりと対策を取ることで、大きな病気や合併症にかからずに済むのです。病気になってから戦うのではなく、予防することが現代の「勝利の秘訣」です。今の時代、剣を使うことはなくても、予防接種という「無刀取り」で、インフルエンザ脳症に打ち勝ちましょう!


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