こんにちは
夏が近づくと、虫刺されの相談が一気に増えてきます。特にお子さんが刺された場合、見た目の赤みや腫れに驚かれる保護者の方も多いのではないでしょうか。今回は、科学的な知見に基づいた「虫刺されの正しい対処法」についてお話しします。

■医学論文が教えてくれる虫刺されの事実
まずは、複数の医学論文の要点を簡単にご紹介します。
- 虫刺されのほとんどは、局所的なアレルギー反応(赤み、腫れ、かゆみ)で終わり、重篤な症状になることは稀です。一般的には、抗ヒスタミン薬やステロイド外用薬での対応が推奨されています(Thimmesch et al., 2022)。
- 子どもに多くみられる「パピュラじんましん」は、虫刺されに対する過敏な免疫反応によるもので、慢性化することもありますが、適切な診断とケアによって十分に管理可能です(Hernandez & Cohen, 2006)。
- 刺された部位をかきむしることで、細菌感染(とびひ、蜂窩織炎など)に発展することがあるため、掻破を防ぐ工夫と早めの対応が重要です(Tkachenko et al., 2019)。
■家庭でできる正しい対処法
- 冷却が第一歩
氷や冷たいタオルで患部を冷やすことで、腫れやかゆみを緩和できます。 - 市販薬の使用
抗ヒスタミン薬の塗り薬や、必要に応じて飲み薬を使うことで、炎症を抑えることができます。ステロイド軟膏も一時的に使用することで効果的です。 - 掻きむしりの予防
爪を短く切り、乳幼児にはミトンや手袋を使うのもよい方法です。 - 感染の兆候を見逃さない
赤みが広がる、膿が出る、発熱するなどの兆候があれば、速やかに医療機関を受診しましょう。 - 重症アレルギーがある場合の備え
過去にアナフィラキシーを起こしたことがあるお子さんには、エピペンなどの緊急用薬を持ち歩くことが必要です。
■院長コメント👨⚕️
虫刺されは一見すると些細なことに思えるかもしれませんが、適切な対応を知っているかどうかで、その後の経過は大きく変わります。これはまるで、茶道の「一座建立」のようなもの。一つひとつの所作に意味があり、落ち着いた行動がその場全体を整えるのです。
慌てず、正しい知識をもとに対応すれば、子どもたちの笑顔はすぐに戻ってきます。医療と日常は常に隣り合わせ。今日の一手が、明日の安心につながります。