牛乳を飲みすぎると鉄不足になる?人工乳はどうなの?
1歳前後になると、赤ちゃんもずいぶん成長し、食事の内容も変わってきますよね。「そろそろ牛乳を飲ませて大丈夫かな?」とお考えの保護者の方も多いかもしれません。
ですが、少し注意が必要です。1歳未満の赤ちゃんに牛乳を与えすぎると、鉄分が不足しやすくなることが、医学的に知られています。以下に、実際の研究結果をいくつかご紹介いたします。

📚 論文からわかること
- 牛乳を大量に飲んでいた13ヶ月の女児が、重度の鉄欠乏性貧血と全身のむくみ(浮腫)を発症。血液検査でヘモグロビン3.8g/dlという非常に低い値が確認され、鉄剤治療で改善したケースがあります(Mantadakis et al., 2019)。
- 牛乳は鉄分が少なく、またカルシウムやカゼインが鉄の吸収を妨げるという特徴があり、それが鉄欠乏を招く大きな原因のひとつです。さらに、一部の赤ちゃんでは腸からの微量な出血が見られることもあります(Ziegler, 2011)。
- 牛乳を主とした食生活で、重度の貧血とたんぱく質漏出性腸症を併発したケースも報告されています。これらの症状は、牛乳をやめることで改善がみられました(Lee et al., 2022)。
🍼 人工乳(粉ミルク)は大丈夫?
はい、多くの市販の粉ミルクには鉄分が強化されており、赤ちゃんの発育に必要な栄養をバランスよく摂ることができます。
世界保健機関(WHO)や小児科学会でも、「1歳未満の乳児には母乳または鉄強化ミルクを推奨する」としています。
💡 ご家庭で気をつけたいポイント
- 1歳未満の赤ちゃんには、牛乳(成分無調整のもの)を主な飲み物として与えないようにしましょう。
- 1歳を過ぎたら、牛乳は1日200〜400mlを目安に、飲みすぎに注意。
- 離乳食では、赤身のお肉・レバー・魚・大豆製品・葉物野菜など、鉄を含む食品を意識的に取り入れると安心です。
🗣 院長コメント
牛乳は栄養が豊富で、大人にとっても健康的な食品ですが、「赤ちゃんの栄養=牛乳だけでOK」と考えるのは、ちょうどピアノの鍵盤で「ド」だけ弾いて名曲を演奏しようとするようなもの。すべての音がそろってこそ、美しいメロディーになるのです。
実は江戸時代の俳人・小林一茶は「やせ蛙 負けるな一茶 これにあり」という句を詠み、弱く見えるものにも意味や力があることを表現しました。母乳や人工乳、そして離乳食のバランスもまさにその通り。目立たないけれど大切な“鉄”を忘れずに、健やかな成長を応援していきましょう。