こんにちは!クリニック院長の皆さまや育児中の保護者の方へ、今回はヒルシュスプルング病について、その基本から診断のタイミング、治療法までわかりやすく解説します。この病気を早期に発見し、適切な治療へつなげることが赤ちゃんの健康にとって何よりも大切です。

ヒルシュスプルング病とは?
ヒルシュスプルング病は、腸の神経節細胞が欠如することで腸管が正常に収縮できなくなり、慢性的な便秘や腸閉塞を引き起こす先天性疾患です。この疾患は1/5000の出生で発生し、特に男児に多い(男:女=4:1)ことが知られています (Swenson, 2002)。
主な症状
- 新生児期に見られる症状
- 胎便の遅延(出生後48時間以内に排出されない)
- 腹部膨満(ガスの貯留による膨らみ)
- 胆汁混じりの嘔吐(腸閉塞が疑われる場合)
- 食欲不振や哺乳後の不快感
- 乳児期以降の症状
- 慢性的な便秘
- 腹部膨満や成長不良(体重増加不良)
- ヒルシュスプルング関連腸炎(HAEC):下痢、発熱、血便、ショック症状が見られる場合もあり、生命の危機を伴うことがあります (Kessmann, 2006)。
診断の流れと検査方法
- 直腸吸引生検
- 神経節細胞の欠如を確認するゴールドスタンダードの検査です (Langer, 2013)。
- バリウム注腸造影
- 狭窄部分とその上流の拡張部位を画像で確認する診断補助法。典型的な「移行ゾーン」が確認できます (Amiel et al., 2001)。
- 肛門直腸内圧検査(ARM)
- 肛門括約筋の弛緩反射の欠如を検出する非侵襲的な検査です。
- 遺伝子検査
- RET遺伝子変異などを確認し、病態の理解を深めます (Tilghman et al., 2019)。
治療法と長期管理
- 外科的治療
- 手術は「プルスルー法」と呼ばれる方法が一般的で、欠如部位を切除し正常な腸を肛門に接続します (Swenson, 2002)。
- 軽症の場合、一段階で手術が行われることも増えています。
- 術後のフォローアップ
- ヒルシュスプルング関連腸炎(HAEC)や便秘の再発、便失禁などのリスクがあるため、小児科医や外科医による長期管理が必要です (Langer & Levitt, 2020)。
基幹病院への紹介タイミング
- 新生児期(生後1か月以内):
胎便の遅延や腹部膨満が見られる場合、速やかに専門施設への紹介を行います。 - 乳児期(生後2~3か月):
慢性的な便秘や成長不良がある場合は基幹病院での精密検査を検討してください。
院長コメント👨⚕️
ヒルシュスプルング病を早期に診断し治療に繋げることは、赤ちゃんの将来の健康を守るための重要な一歩です。この病気を考えると、私は江戸時代の「北前船」を思い出します。商人たちは風や潮流を読み、船を操りながら日本各地に商品を運びました。同様に、医師として私たちも患者さんの病状という「潮流」を見極め、適切な治療という「港」へ導いていきましょう。
「未来への舵を取るのは今この瞬間」。長引く便秘が気になる乳児には、ためらわずに専門医の力を借りてください。一緒に赤ちゃんの健康な未来を築きましょう!